システム・トレーディングのススメ

どうやったら相場で儲けることができるのか

私が株を始めたのは、インターネットが一般に普及し、ネット証券会社が設立されはじめたころでした。

 そのころの私は「チャートを読めることが成功への第一歩」だと信じていました。毎晩、本業の仕事が終わった後に、全銘柄のチャートをじっくり眺めるのが日課で、これから騰がりそうなチャートを見つけると、週足・月足チャートでチェックし、底値を確認してから買う、というのが私の投資法でした。

 毎日チャートを見ていると、先が読めるようになる(=相場勘が身に付く)と思っていたのです。
「相場勘を身につけるにはチャートを手書きすべき」という話を信じて、保有株のチャートはあえてチャートソフトを使わずに手書きしていました。

 しかし、実際にはなかなか思うようにいきませんでした。ここが底値圏だと確信して買った銘柄なのに、上昇は一瞬だけで、どんどん下がっていくのです。儲かるときもありますが、大きく損することも多くありました。底値圏だと確信して買っているので、なかなか損切りできなかったのです。トータルでは、ほとんど毎月で損を出していました。それでも私は「売買を繰り返せば必ず相場勘が身に付く。今の負けはその為の先行投資だ」と構えていました。

 現実は厳しいもので、いつの間にか、資金は大きく減った上、持ち株の半分以上が塩漬けの状態で動かせなくなっていました。なんとか他の株で儲けようと思っても、大抵はさらに塩漬けを増やすか、たまに儲けても焼け石に水という状態です。持ち株の時価評価を見るのが憂鬱で、パソコンに向かってはため息をつく、そんな日々が続きました。

 株を始める前に抱いていたイメージと、実際の私の姿は大きく違っていました。株を初めて1年、やっと私はこのままではどうしようもないことに気付きました。
 あるとき、いままでの自分の投資法を振り返ってみて、わかったことがあります。

 ・ 私は相場勘を生まれ持った人間ではない。
 ・ プロの投資家や機関投資家を相手に、経験で勝つことはできない。
 ・ いくら塩漬け株を眺めていても相場勘は身に付かない。

 このままでは、いくら売買を続けても、金をドブに捨てているだけです。私は、いままでとは違う、新しい手法を見つける必要にせまられていました。そこで私が目を付けたのが以前から気になっていた、システム・トレーディングです。

システム・トレーディングってなに?

 システム・トレーディングとは、投資家があらかじめ決めておいたルールに従ってトレードする投資法です。

 例えば、テクニカル指標(RSIやVRなど)が一定数値を越えたら買い、チャートがこういう形になったら買い、過去20日の最高値を更新したら買い、というように多様なルールがあります。もちろん実際の運用にはもっと複雑なルールを使うことが多いです。これらのルールをシステム(トレーディング・システム)と呼びます。

 「システム・トレーディング=コンピュータを使う」というわけではありませんが、たいていはシステムをコンピュータ(パソコン)でプログラム化して、パソコンが出す売買の指示に従ってトレードします。

 実際に「マーケットの魔術師」に取り上げられるような有名なトレーダーの多くが、独自のトレーディングシステムを使って大きな成果をあげています。しかし、私は、トレーディングシステムというのはプロの投資家や機関投資家の扱うもので、個人で本格的なシステムを持つことなど無理だと思っていました。そもそも、私の周りにシステムを使っている人など誰もいませんでした。

 ところが、いろいろ調べてみると、個人でシステムを持つことも決して夢ではないことがわかってきました。自分のシステムを使っている個人投資家の方とも知り合うことができ、お話を聞かせてもらっているうちに、私はいままでの投資法を捨ててシステム・トレーディングに賭けてみようと思うようになりました。

システムを作るにはどうすればいいの?

 どうやったら自分のシステムを開発できるのでしょうか。チャートソフトや株価分析ソフトでは、システムを作ったりテストすることはできません。システムを開発するには、いくつかの方法があります。

 1.システム開発用のソフトを使う
 2.Excel(表計算ソフト)を使う
 3.プログラム言語で一から開発する

 1のシステム開発用のソフトというのは、システムを設計したりテストすることができるソフトのことで、アメリカで売られている TradeStationやMetaStockなどがあります。これらのソフトを個人輸入することも考えたのですが、日本ではユーザーや資料が少なくマスターするのが困難なうえ、そもそも日本株を対象に作られたソフトでないことから、購入は見送りました。(参考リンク:TradeStationの公式サイト[英語]、MetaStockの公式サイト[英語])

 2のExcelは、使ったことがある人も多いのではないでしょうか。Excelでシステムを開発したりテストするには、VBAというExcelに組み込まれたプログラム言語を使う必要があります。完全にマスターするのは一からプログラムを学ぶのと同じぐらい大変です。
Excelでシステムを作る方法は、書籍「株はチャートでわかる」「ゴミ投資家のための株式トレード入門」が参考になると思います。詳しくはおすすめ書籍コーナーへ。

 3のプログラム言語というのは、ExcelのVBAなどよりも、もっと本格的なVisualBasicやVisualC++、Delphiといった言語ソフトを使って開発する方法です。これは完全に専門職(プログラマー)の仕事になり、経験があれば自分で開発することもできますが、それが無理ならプログラマーに開発を依頼することになります。

 いずれにせよ手間がかかることは間違いありません。
最終的には、私は知り合いのプログラマに開発を依頼しました。その際、特定のシステムを開発してもらうのではなく、「システム開発用のソフト=いろいろなシステム(売買ルール)を柔軟に設計し、過去データで検証できるソフト」を依頼しました。さまざまなシステムを試すのが目的だったので、売買ルールが固定されていたり、数値しか変更できないのでは意味がありません。思っていた以上にお金と時間はかかりましたが、その甲斐あって、非常に満足するソフトになりました。 (このソフトに興味のある方はこちら

実際にシステムを使った運用を始めて

 「自分のためのシステム」を見つけるには、まだまだ多くの苦労がありました。それについては別のコーナーでお話ししたいと思います。

 実際に自分の作ったシステムで運用も始めました。もちろん、まだまだ完璧なシステムとは言えません。売買のタイミングは完全にシステムにまかせていますが、銘柄の選択やマネーマネジメントは自分でやっています。いずれはその辺もシステムに含められればと考えています。

 それでも自分のシステムを使うようになってから、私の投資スタイルは大きく変わりました。

 一番大きな変化が売買に関する迷いがなくなったことです。過去の私が損ばかりしていた最大の原因が、この「迷い」だったと思っています。「損切りするか、ナンピンするか」、「もう売ってしまうか、まだ待つべきか。」、「どちらの株を買うのか」、「どれだけ買うのか」など、迷ったすえに決めたことは、たいてい悪い結果になるものです。システムを使うというのは、この「迷い」を禁止するということなのです。

 また、以前は毎晩、何時間もかけてチャートを眺めていましたが、今では毎日の作業は約15分ほどです。その日の株価データをダウンロードして、データベースを更新して、売買をチェックするだけ。もちろんシステムの成績のチェックや改良は行いますが、それは土日にゆっくりとやります。時間にも気持ちにもゆとりが生じ、それが、いろいろな良い結果をもたらしているのだと思います。

 そして、これが一番大切なのですが、安定して利益を上げられるようになりました。私のシステムは勝率100%、1年で資金が10倍!!というような魔法のソフトではありません。当然、勝つときもあれば負けるときもあります。しかし、資産全体の浮き沈みはかなり減りました。トータルでの成績も、以前に比べると格段に良くなりました。

 みなさんもぜひ自分のシステムを作ってください。システムを作るのは大変な作業ですが、苦労するだけの価値は必ずあります。

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